イジワル御曹司のギャップに参ってます!
*
プロジェクトの走り始めは忙しい。
この業界の特性か、スケジュールは常に短期決戦。ちょっとでもモタモタするとすぐに納期がやってきて、目も当てられないことになる。
だから今日も残業だ。
私を含め大半の人が残業を恒例行事と諦めていて、日付が変わる前に家に着ければ御の字だと思っている。
今日も例外なく、時刻はすでに二十二時を回っていた。
そしてこんな時間だというのに休憩室にはまだ人影があった。
氷川だ。横長のベンチに一人座って、缶コーヒーを飲んでいる。
少しだけぼんやりとしていて、なんだか疲れているようにも見えた。
まぁ、この時間まで働いていたのだから、疲れて当たり前か。
「さっきは、ありがとう」
ガラス張りのパーテーションと観葉植物に囲まれた休憩室に、私はひょこっと頭を覗かせた。
声に気付いた氷川が、うっとおしそうな目つきで私を睨む。
「何のことです」
「あのメモの裏の、メッセージ」
「……ああ」
「お陰で穏便に収めることができたから」
「……あの程度で手間取られては困るんですよ」
氷川はフン、と鼻を鳴らして、手元のコーヒーに視線を落とした。
心なしか、ちょっと照れているようにも見える。
プロジェクトの走り始めは忙しい。
この業界の特性か、スケジュールは常に短期決戦。ちょっとでもモタモタするとすぐに納期がやってきて、目も当てられないことになる。
だから今日も残業だ。
私を含め大半の人が残業を恒例行事と諦めていて、日付が変わる前に家に着ければ御の字だと思っている。
今日も例外なく、時刻はすでに二十二時を回っていた。
そしてこんな時間だというのに休憩室にはまだ人影があった。
氷川だ。横長のベンチに一人座って、缶コーヒーを飲んでいる。
少しだけぼんやりとしていて、なんだか疲れているようにも見えた。
まぁ、この時間まで働いていたのだから、疲れて当たり前か。
「さっきは、ありがとう」
ガラス張りのパーテーションと観葉植物に囲まれた休憩室に、私はひょこっと頭を覗かせた。
声に気付いた氷川が、うっとおしそうな目つきで私を睨む。
「何のことです」
「あのメモの裏の、メッセージ」
「……ああ」
「お陰で穏便に収めることができたから」
「……あの程度で手間取られては困るんですよ」
氷川はフン、と鼻を鳴らして、手元のコーヒーに視線を落とした。
心なしか、ちょっと照れているようにも見える。