イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「喧嘩を売られるのはかまわないんだけどね。あの保守的過ぎる仕事のやり方が気にくわないわ」

ポケットに忍ばせていた小銭を休憩室の自販機へ投入し、甘めの缶コーヒーを買う。
――ちなみに、小銭をポケットに直入れしているあたり、男らしいねとよくからかわれる。


「当たり障りなくこなせばいいと思って。お役所仕事じゃないっつの」

ぐびっと一気に缶コーヒーを飲み干す。
鋭い甘さが口の中に残り、喉の渇きが癒されたかといわれると疑問だが、脳に必要な糖分はしっかりととれたような気がする。

「俺は納得できません。なんでアイツが次の出世候補なんだろう」

続けて市ヶ谷くんが悔しまぎれに自販機のボタンをグーパンチ。コーラを取り出すと、乱暴に栓を開け一気に飲み干した。

「……平山課長のお気に入りだしね」

「院卒って、そんなに偉いんすか?」

「まぁ、うちの会社は古いから、そういう風潮があるよね」

「仕事の内容より学歴って、おかしくないですか?
……俺、朱石先輩の方が、出世するには相応しいと思います。
いつも誰よりも遅くまで残って頑張ってるし、人望もあるし、俺たち後輩の面倒見も良いし……」

悔しさを滲ませながらコーラの缶を強く握る市ヶ谷くんの姿を見て、胸の奥に温かいものが込みあげてくる。
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