イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「あなたは理解できましたか?」
突然、氷川が私へと話題を振ってくる。
「わ、私?」
思わず目をしばたかせて、ええと、と考える振りをする。
男性が苦手な私がデートスポットなど行ったことあるわけないだろう、とは口が裂けても言えない。
とはいえ、知ったかぶりをするわけにもいかず観念する。

「ううん。私は行ったことがないから、雰囲気が掴めないよ……青山さんは?」

「私は開園当時に行ったことがあるのですが、昨年のリニューアルオープン後を知りませんので、認識に齟齬があるかもしれません」
私はそっかーと頷きながら、青山さんでも俗なデートスポットへ行くのかと、そちらの方に興味が湧いてしまった。
クールな彼女でもデートスポットへ行けばはしゃぐのだろうか。
普段寡黙な彼女が笑顔で彼氏とじゃれ合う姿――それはそれは可愛いだろう。

そんな私の妄想をよそに、氷川がうーんと唸った。

「サポートメンバーである市ヶ谷くんと青山さんはともかく、私やあなたのようなリーダークラスがイメージを掴めていないことは少々問題ですね」

「確かに」

私や氷川は、プロジェクトメンバー全員に方向性を示し、チーム全体をひとつの完成形へと導かなければならない。
その私たちが顧客の要求するイメージを把握できないのであれば、指揮を取るなど不可能に等しい。


「あなた、明日のスケジュールは?」

突然の質問に私は眉をひそめる。
明日は土曜日で会社は休みだ。もしかして、休日出勤して欲しいと言っているのか。

「特にないけど。何かあるなら出社しようか?」

「では、会社じゃなくて、ここに行ってきてください」

氷川は青山さんのノートパソコンをくるりと回転させて私の方へ向け、東京ラブランドパークを映し出しているモニターを指さした。私は思わず「は?」と間抜けな声を漏らす。
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