イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「そ、それは、デートスポットに私一人で潜入して来いって行ってる?」

「まさか。私も同伴します」

「ああ、氷川さんも――って、ええ!?」

思わず私は身を乗り出した。『東京ラブランドパーク』にお堅い氷川!? 『ラブ』が似合わないにもほどがある。
そんな私の考えを察したのだろう、氷川は失礼だとでも言いたげに不機嫌な顔をする。

「当たり前でしょう。デートスポットにあなたが一人で行ってどうするっていうんですか」

「いや……そうだけど……でも……」

むしろ、デートスポットに私と氷川で行ってどうするんだ、と問いただしたくなった。
仕事のためとはいえ、二人で仲良くデートでもしろと?
横で聞いていた青山さんですら呆然としていて、その隣の市ヶ谷くんがすかさず異を唱えた。

「それなら俺も行きます!」

「結構です。あなたは最近行ったばかりなのでしょう。行くなら自分の彼女と行ってなさい」

「当時の彼女なんて、もう別れちゃいましたよ」

思い出したくないことを思い出してしまったのか、市ヶ谷くんは口を尖らす。
それでも氷川は駄々をこねる市ヶ谷くんをきっぱりと切り捨てた。

「三人組でデートスポットなど行きたくはありません。却下」

が、次の瞬間、じっと黙って聞いていたはずの青山さんまでもが手を挙げた。

「それなら私も参加します。そうすれば二対二で釣り合いが取れるでしょう」

まさかの積極的発言に私と市ヶ谷くんは目を見開いた。
氷川も意外だったのだろう、ちょっとだけこめかみをピクリとさせて、それでも彼はこう言った。

「結構です。私と朱石さんさえ把握していれば十分だ」

クールな青山さんは表情を崩さぬまま固まっていた。
ひょっとしたら、断られたことに対してショックを受けているのかもしれない。
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