イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「……ありがとう」

市ヶ谷くんにそう感じてもらえていたことが嬉しい。
そして同時に悔しくもある。
氷川に負けたくないと一番に感じているのは、誰よりも私自身のはずだ。
仕事に対する熱意だって、私の方が上。
内容にしたって、劣ってはいないはず。

けれど。
順調に仕事をこなしているとはいえ、地味に年数を積み重ねてきただけの私では、学歴というバックアップを持つ彼にはかなわない。
大プロジェクトを成功に導いたというような華々しいキャリアがあるならともかく、私にも氷川にも、まだまだそんな経歴はない。
未知数な私と、学歴を持つ彼。比べるとしたら――

「成果がなくても、高学歴ってだけで評価されるからなぁ」


「すみませんね、高学歴で」

ため息をついた私の背後から、突然低い声が響いた。聞き覚えのある、冷静な声色。
私と市ヶ谷くんはその声に背筋を凍らせる。

恐る恐る振り返った先には、やっぱり。あの冷徹男・氷川流星(ひかわりゅうせい)の姿。
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