イジワル御曹司のギャップに参ってます!
デートスポットのジェットコースターなんて、大したものじゃないだろう。
そんな思い込みで余裕をかましていた私だったが、現物を目の前にして絶句する。

はるか上空を走る滑走路、垂直に近い落下角度、足場がなく膝から下がぶらぶらと不安定に揺さぶられるコースターの形状。挙句の果てに、座る向きが通常の乗り物とは逆向きで、背中から滑り落ちることとなる。
これは、ガチだ。

眺めるだけで身震いがした。もともとジェットコースターなんて得意じゃないのに、こんなもの乗れるわけがない。

「あの、私、ここで待っていてもいい?」

ジェットコースターから伸びる順番待ちの列の最後尾に付きながら、私は恐る恐る手を挙げた。

「だめですよー、これがここの一押しなんですから」
「行こうと言ったのはあなたでしょう」
「意外に楽しいかもしれませんよ」

全員が口々に私をたしなめる。どうしてみんな平気な顔をしていられるのだろう。こんな拷問のような所業。

「無理……」

「大丈夫ですよ! 俺が付いてますから!」

「だいたい、これのどこがキラキラクラクラギュンギュンだっていうの? 高いところ走ってるだけじゃない!」

「朱石さん、あそこを見てください。コースターのレールが室内へと続いています。あの中にヒントが隠されているかもしれません?」

「……じゃあ、三人だけで行ってきて!」

順番待ちの行列はすでに進み始めていて、前後の客に挟まれ、簡単には身動きの取れない位置にいた。
それでも私は人ごみをかき分け、なんとかひとりだけ列から脱走する。
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