イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「お疲れ様です……」

妬みを聞かれて気まずい表情で挨拶する私。一方の氷川は全く気にならないといった素振りで、自販機のコーヒーを買っている。
余裕すら感じられる態度。私なんか恐れるに足りぬといったところなのか。

が、ここでちくりと一言。
「まぁ、学歴がないよりはあった方がマシかと思いますけれどね」

思わず頬を引きつらせる私。
「……学歴なくて悪かったわね」

「別に、あなたのことを言ったわけではありませんが」

いやいやいや、今のは絶対私に対する嫌味だろう!


漂う険悪な空気。
が、それを払拭するかのごとく私たちの間に割り込んだのは、市ヶ谷くんだった。

「どういうつもりですか、氷川さん!」

動じることなく食らい付く、怖いもの知らずの市ヶ谷くん。その度胸は若さ故だろう。

「今回のプレゼンも、明らかに赤石先輩を潰そうとしてましたよね!?
先輩に何の恨みがあるっていうんですか!?」

「恨みも何も――」

氷川は顔色ひとつ変えず、淡々と答える。

「――それが仕事でしょう。それとも何です? みんなで手を取り合って仲良く働きましょうとでも言うんですか」

「協力の何が悪いんですか!? チームワークは大切でしょう」

「小学生ですか、君は」

氷川の眼鏡のレンズがきらりと攻撃的に光る。

< 9 / 227 >

この作品をシェア

pagetop