イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「やったぁ!」

「すごいすごい」

振り返った私に、流星は拍手で頷く。

「あなたはいつも飲み込みが早いね」

「……いつも?」

「仕事でも、すぐに技術を吸収するでしょう?」

「……え?」

私が目をしばたかせると「ああ、ごめん、仕事の話なんかして」そう流星は訂正して、私の頭を撫でた。

そういえばつい忘れていたけれど、『流星』は、私がいつも一緒に仕事をしている憎たらしい『氷川』でもあるんだよなぁ。
『氷川』にそんな風に思われていたなんて。彼からの褒め言葉はなんだかいつも気恥ずかしい。

流星はお祭りピエロからウサギの置物を受け取ると「ねぇ、あんず飴好き?」なんて言ってさっさと次の屋台を目指す。

「パチンコで当てたら二つもらえるって。今度こそ俺に任せて」

あんず飴の屋台の前で、意気揚々とパチンコ台に向き合う流星。
昔ながらの懐かしい、手作りのパチンコ台だった。
手元のピストンに弾かれて、青いマーブル柄のビー玉が飛び出して、台の上に刺さった釘に当たって弾け落ちる。
ビー玉は一番下に落ちる前に、『当たり』と書かれた釘のところに引っかかって止まった。

「よし! 当たった!」

無邪気に喜んで、屋台の店番ピエロから二つのあんず飴を受け取る。

「はい。どうぞ」

満面の笑みを浮かべた流星が、私へ一つ差し出す。
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