イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「ありがとう……」

思わず笑顔まで受け取って、私はあんず飴へかぶり付いた。
さっきまで氷の台に乗せられていた飴は、ひんやりと甘くて、心地良い。
そんな私を見て、流星はふう、と小さく息を吐いた。

「緊張が解れてきたみたいだね。少し安心した」

「え?」

「気付かなかった? さっきまですごく表情が硬かったよ」

たぶんそれは、男性とこんな場所で二人きりになったからだ。加えて、強引に手を握られたからだ。
でもそれは流星だから悪いとか、そういうわけではなくて……

「ごめん……普段こんなところ来ないから、どうしたらいいか分からなくて」

「正直、俺とのデート、そんなに嫌なのかなぁって不安だった」

「そ、そういうわけじゃ……」

「俺より、市ヶ谷くんと一緒の方がいい?」

ちょっと真面目な顔になって、流星が私の顔を覗き込む。
私の表情の一ミリも逃すまいといういうように、清廉な瞳が真っ直ぐに私を射貫く。

「そんなことは……」

「……」

「ないんだけど……」

困り果てた私を見て、流星がクスリと吹き出した。

「俺が目の前にいるんだから、嘘でも俺と一緒が良いって言うでしょ普通。
まったく、あなたは本当に手厳しいな……」

自嘲する流星。諦めたように肩を竦めて背を向けた。
その背中がちょっぴり寂しそうで、なんだか悪いことをしたみたいに胸が疼いた。
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