好きという感情に気づけたなら
雨宮櫻という人
人は『恋に落ちる音がした』
なんて言うけど、そんなのは嘘だと思う。
ーー高校1年生の春
出会いは唐突に。
『どうして泣いているの?』
彼女の声が、あの時の光景が鮮明に思い出せる。
『辛くなったらね、おまじないするの』
同い年とは思えない、母親のような柔らかい雰囲気。
『今日からお友達だよ、私達』
ほら、あなたの声が…笑顔が心に染みていく。
音なんてしない。じんわりと、白いキャンパスに色のついた水を垂らすように。
恋は染みていくものだ。
『音弥!私達親友だもんね〜!』
屈託なく笑う彼女。人の気も知らずにそう言って笑う彼女。
強く、優しく、悲しみで打ちのめされていた自分を救ってくれた大切な人。
誰にも言えない……それでも、好きな人。
それが音弥三桜の目に映る
雨宮櫻という人
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