好きという感情に気づけたなら
あのトイレでおまじないをかけてもらった日から…なのか。
明確にわかってる訳では無いが、きっと、出会った時からずっと櫻に恋してる。
三桜は無意識に頬に手を当てた。
櫻の唇が触れた方の頬だ。
三桜はきっと自分の頬が赤くなってると感じ、櫻の背中から視線を外してうつむいた。
私って変なのかな…?
目をつぶって問いかける。
女の子を好きになるって…おかしいこと?
なんどもなんども、自分に問いかけていた質問だ。
もう何千回自分に聞いたのかもわからない。
「ーさん、音弥さん」
「っは、はい?!」
ハットして声のする方を振り向いた。
「あ、ごめんごめん。なんか下向いて動いてなかったから…具合悪いのかと思ったんだけど…平気?」
隣の席の島野十輝だ。
形のいい真っ黒な瞳でじっと見つめてくる。
な、なんか…やだ…。
「へ、平気だよ。なんでもないよ。ありがとう」
黒い瞳から逃れるように十輝からかおをそむけて三桜は答えた。