好きという感情に気づけたなら





(あ、あれ…?)




ふいに妙な違和感に気付きなんとなく隣の席を見た。



「…!!」



三桜は驚いて心臓が一瞬止まるのを感じた。



じっと、何を考えているのか分からない…そんな表情で十輝がこっちを見ていたから。



十輝は三桜と目が合うと、すぐに笑顔を作って首をかしげた。



まるで、『なに?』と問いかけてくるように。



三桜はすぐに視線をそらした。


あっ、逆に変に思われた?!なんか笑い返せばよかったかも…。



三桜はもう一度、ちらっと十輝を見たが

彼はもう詩音と話してこっちを見てはいなかった。




今度は嫌な心臓の音が聞こえてくる。


バレてない…よね?



「音弥!またボーッとしてる!」



「ひゃっ!ごめん!」




櫻からまた突っ込まれてしゃんと背筋を伸ばす。



「へ〜、音弥さんって結構ボケっとしてるんだな」



馬鹿にするわけでもない、本当に率直に感想を述べたように詩音が言った。



「そうなんだよねー、時々意識がどっかいってるもんね。音弥」



「そ、そうかな〜?」



櫻と詩音の会話にえへへ、と苦笑する。



だって、櫻がいるから。



櫻といると、ドキドキしちゃうから…。



三桜はきゅっと唇を結んだ。




好きだからだもん…。





< 16 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop