好きという感情に気づけたなら
(あ、あれ…?)
ふいに妙な違和感に気付きなんとなく隣の席を見た。
「…!!」
三桜は驚いて心臓が一瞬止まるのを感じた。
じっと、何を考えているのか分からない…そんな表情で十輝がこっちを見ていたから。
十輝は三桜と目が合うと、すぐに笑顔を作って首をかしげた。
まるで、『なに?』と問いかけてくるように。
三桜はすぐに視線をそらした。
あっ、逆に変に思われた?!なんか笑い返せばよかったかも…。
三桜はもう一度、ちらっと十輝を見たが
彼はもう詩音と話してこっちを見てはいなかった。
今度は嫌な心臓の音が聞こえてくる。
バレてない…よね?
「音弥!またボーッとしてる!」
「ひゃっ!ごめん!」
櫻からまた突っ込まれてしゃんと背筋を伸ばす。
「へ〜、音弥さんって結構ボケっとしてるんだな」
馬鹿にするわけでもない、本当に率直に感想を述べたように詩音が言った。
「そうなんだよねー、時々意識がどっかいってるもんね。音弥」
「そ、そうかな〜?」
櫻と詩音の会話にえへへ、と苦笑する。
だって、櫻がいるから。
櫻といると、ドキドキしちゃうから…。
三桜はきゅっと唇を結んだ。
好きだからだもん…。