好きという感情に気づけたなら
櫻との出会いは一年前。
高校に入学して間もない頃だった。
『どうして泣いているの?』
その声は、トイレのドア越しに聞こえてきた。
三桜は中にいてしゃがみこみ、ひたすら声を押し殺していたが、どうしても嗚咽はとめられず聞こえていたらしい。
『…っ、関係…ないよっ』
震える声でドア越しにいる見知らぬ誰かにそう言った。この時は、まだドア越しに話しているのが櫻だったなんて知るよしもなかった。
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もともと、内気で人見知り。そんな三桜が入学して1ヶ月の間で友達が出来るはずがなかった。
それ以前に、『友達』と呼べる存在を今まで作れたことがなかった。
小さな町だから小学校から高校まで一緒になる人達が多く、むしろ他の市や町から来る人の方が珍しいくらい。
それくらい、この町は田舎なのだ。
小さい頃から根付く人見知りや臆病という性格は消えること無かったし
見た目も派手なわけじゃないしいつも俯いてばかりだったから周りも話しかけようとはしなかった。
だけど、干渉されないだけましだったんだ。とこの頃はつくづく感じていた。