好きという感情に気づけたなら
『あっ!ごっめ〜ん!音弥さんいたんだ〜?』
ポタポタと自分からたれ落ちる雫を俯いて見ながら、その申し訳なさの欠片もないセリフが耳の中に入ってきた。
『ほんとごめんねぇ?バケツ持ってたらつまずいちゃって〜。でも席に座ってたの見えなかったからさぁ』
きゃはははは、と女子数人で大きな声で笑いながら三桜の前に立ち並ぶ。
彼女たちは俗に言ういじめっ子。
地元の子達ではなく、他の市からきたちょっとギャルっぽいこたちだった。
だからだろうか。田舎の学校ではそういう子達がトップに躍り出る。
そして、何か目立つような事をしたくなる。
彼女たちの場合、それが『いじめ』だっただけなんだろう。
そして、その標的は地味でクラスから浮いていた三桜だった。
中学まではなにも干渉されず居ないも同然のような存在が、今はそれが格好の獲物というわけだ。
中学から同じクラスメイト達は最初は驚いてざわついてたものの、今は見て見ぬふりが当たり前になっていた。