好きという感情に気づけたなら
『…っ、関係…ないよっ』
誰かも知らない、でも確かにドアの向こうにいる相手にそう言い放った。
三桜がそういったきり、姿の見えない相手からは何も言われず
本当にドアの向こう側にいるのかどうかもわからなくなっていた。
『……辛くなったらね、おまじないをするの』
……は?
再び聞こえてきた声は優しい響きをしてるが言っていることは意味がわからなかった。
おまじない、なんて人を馬鹿にしている。
この人も私のこと…馬鹿にしてる。
ギュッと唇をかみしめて三桜は何も言わないようにした。
なにか返してしまってら負けだ、とその時は思ったから。
『涙も止まる、辛さが薄らぐおまじない』
まるで子供をあやすような声で小さくそう言う。
『かけてあげるから、ドアを開けて?私の前に出てきて欲しいの。大丈夫だから、お願い』
ススス、とドアを手でなでるような擦れた音が伝わってきた。