本音
「私は何も取り柄のない穀潰しやったんやろ?
そんな底辺な女も、生まれや育ちで救われるって、あんたは酒に酔うたびに私を罵った。

会社で上司や部下に愚痴も言えない、
イイコの仮面を被ったあんたの捌け口は、
いつも私だった!

優しかったのは、結婚して半年たらず…

釣った魚に餌をやる事を忘れたあんたを…
ずっと恨んできました。

あんたが癌の宣告を受けた時…

ざまぁーみろ!と声を殺して笑いました。

それからは、私が健気な妻を演じました。

あんたは癌に怯えるばかり…

もう、病室を出た瞬間に顔がほころんでしまうのが抑えらんなかったわ。

散々、人を見下してきた人間の癖に……

弱いわねって」
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