本音
「大学を卒業して、叔父の縁故で入った、
あんたと同じ会社の関西支店で受付嬢をしていたわ。

あんたとの見合い話が出始めた頃はさ、

あんたは契約が取れる度に叔父や私に自分をアピールした。

『自分はやるべき事をやってるだけです。
それが上手く行った時は嬉しいです』ってな。

健気な好青年気取りやったね。

『許されるなら、沙耶子さんと僕は永遠を作りたい』って、ドラマの様なプロポーズを甘く囁いたりな。

箱入り娘で恋愛というものに無知な私は、
見事にあんたに堕ちてしまった。

地獄の扉を開けてしまったんよ…

でも、その地獄は五年で終わった。

二十代最期の年に私は未亡人になったわ。

あなたとの永遠は五年で終わってくれた。

今日はね、その終焉の日を祝わないと。

乾杯!

孝之さん」

遺影に向かい、缶ビールをたむけた。
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