本音
でも、今日で終わる。

あの人が骨になって、やっと実感出来た。

人間の最期なんてさ、
肉体を焼かれて骨になって、壺に押し込まれてしまうのよ…

これが永遠の眠りにつくということ。
さよならってことね。

肉体がなくなってしまえば、
死を受け入れられる。

「孝之さん、おやすみなさい」

骨壷に蓋を閉める時、
私は無意識に呟いた。


泣かない喪服の未亡人は、参列者にどんな目で見られただろう…

余りにもショックで現実を見れない悲劇の未亡人か?

それとも…
冷酷な未亡人と思ったか?


まぁ、人様にどう思われようと知る由もない。
所詮、この葬式に来た人達も、故人の死を悲しみ嘆いたところで、恐らく、大半の人は数日で忘れ去り、日常に支障をきたすことなく、日々の生活に戻るだろう。

そう、何事もなかったかのように。



私も孝之さんに最期にしてあげられる事をしているまでに過ぎない。



私は最期まであなたの妻でした。

これは、紛れもない事実。
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