本音
「………くっくっくっく…
死んでくれて有難う…」

沙耶子は、嗚咽を上げ、泣きながら遺影の孝之に向い、訴えた。


「生地獄やった…
知り合いなんてほとんど居ない東京であんたと新生活を始めた。

最初は優しかった孝之さん。

東京支店で若手ナンバー1の実力のある商社マンやったんだもんね。

その噂は、関西支店にまで届くほどやった。
仕事が出来て、外面のいい孝之さんをえらく叔父が気に入って、私の見合い相手として紹介した。

私との結婚を考えたのは、叔父がたまたまあんたの会社の取締役だったからやろ?

叔父に一目を置いて欲しかったんやろ?

だから、好きでもない私と結婚した。

自分の出世の為にね」

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