本音
「…逃げ出したかった…
あんたとの結婚生活…
あんたは狡い男や…
私の両親や叔父の前では、イイコの仮面を被り、私を幸せにしょうとしている思いを演じた。
あくまでも演技やのにね…
さすがやね…
将来有望な商社の営業マンは…
すっかりみんなを騙した。
結婚生活の多少の不満は、私の我儘からとでも言いたい様に仕向けた。
見栄を張って買ったこのマンションが、
その象徴とでも言いたい様にな。
あんたとの冷めた関係で築く生活に、
温かさなんて感じなかった。
ただ、あんたが出張や付き合いで家を空ける時、安らぎの場でもあった。
窓から見える東京タワーの灯りを眺めていた。
それが唯一の慰めやった。
厭な夫やけど、この景色が成功の証だと思ったんよ…
いつまでこの冷めた空気を吸って生きるんやろあ…って絶望して、こっちが死にたくなったわ。
でも、我慢はするもんやね!
こんなに大きな幸せがやって来るなんて…
石の上にも三年とは言うけど、五年堪えただけあったわ。
神様に感謝しないと。
この景色も象徴も私だけのもの。
これからは、あんたの影に怯えずに自由に生きてゆける。
そう、自由なんや!」
あんたとの結婚生活…
あんたは狡い男や…
私の両親や叔父の前では、イイコの仮面を被り、私を幸せにしょうとしている思いを演じた。
あくまでも演技やのにね…
さすがやね…
将来有望な商社の営業マンは…
すっかりみんなを騙した。
結婚生活の多少の不満は、私の我儘からとでも言いたい様に仕向けた。
見栄を張って買ったこのマンションが、
その象徴とでも言いたい様にな。
あんたとの冷めた関係で築く生活に、
温かさなんて感じなかった。
ただ、あんたが出張や付き合いで家を空ける時、安らぎの場でもあった。
窓から見える東京タワーの灯りを眺めていた。
それが唯一の慰めやった。
厭な夫やけど、この景色が成功の証だと思ったんよ…
いつまでこの冷めた空気を吸って生きるんやろあ…って絶望して、こっちが死にたくなったわ。
でも、我慢はするもんやね!
こんなに大きな幸せがやって来るなんて…
石の上にも三年とは言うけど、五年堪えただけあったわ。
神様に感謝しないと。
この景色も象徴も私だけのもの。
これからは、あんたの影に怯えずに自由に生きてゆける。
そう、自由なんや!」