『ココロ彩る恋』を貴方と……
『紫音』
嗄れた声を聞いたのは初めてだった。
誰だろう…と思い、振り返ったら祖父がいた。
『お爺ちゃんよ。紫音ちゃん』
養護施設の園長先生がそう言った。
『お迎えに来てくれたの。今日から貴女の面倒を見て下さるのよ』
(お爺ちゃん……?)
そんな血縁者がいたのも知らなかった。
私の世界は狭くて、母と自分だけの世界が全てだと信じていた。
『お世話になりました。じゃあ行こうか』
伸ばされた手を見た。
厚くて手の平のシワが深くて真っ赤だった。
握ってもいいのかどうか、ここで母を待たなくてもいいのか…と悩んだ。
怖くて逃げだしたい気持ちも何処かにあった。だから、すぐには握り返せなかった。
『お爺ちゃんも紫音と同じように一人だけなんだよ。一人者同士、仲良く一緒に住んでみないか?』
私を見ている目が潤んでいた。
憐れんでいるのも知らず、その目がとても綺麗だと思った。
『……うん……いいよ……』
母が迎えに来るまで、この人と一緒に暮らそう。
我が儘を言わずにいい子でいれば、きっと早く引き取りに来てくれる。
そう信じて差し出された手の上に手を乗せた。
優しく握られた手の温もりをまだ忘れたことなんてないーー。
「……私と同じような思い出が、兵藤さんにもあるのかな」
嗄れた声を聞いたのは初めてだった。
誰だろう…と思い、振り返ったら祖父がいた。
『お爺ちゃんよ。紫音ちゃん』
養護施設の園長先生がそう言った。
『お迎えに来てくれたの。今日から貴女の面倒を見て下さるのよ』
(お爺ちゃん……?)
そんな血縁者がいたのも知らなかった。
私の世界は狭くて、母と自分だけの世界が全てだと信じていた。
『お世話になりました。じゃあ行こうか』
伸ばされた手を見た。
厚くて手の平のシワが深くて真っ赤だった。
握ってもいいのかどうか、ここで母を待たなくてもいいのか…と悩んだ。
怖くて逃げだしたい気持ちも何処かにあった。だから、すぐには握り返せなかった。
『お爺ちゃんも紫音と同じように一人だけなんだよ。一人者同士、仲良く一緒に住んでみないか?』
私を見ている目が潤んでいた。
憐れんでいるのも知らず、その目がとても綺麗だと思った。
『……うん……いいよ……』
母が迎えに来るまで、この人と一緒に暮らそう。
我が儘を言わずにいい子でいれば、きっと早く引き取りに来てくれる。
そう信じて差し出された手の上に手を乗せた。
優しく握られた手の温もりをまだ忘れたことなんてないーー。
「……私と同じような思い出が、兵藤さんにもあるのかな」