『ココロ彩る恋』を貴方と……
「やだやだ。本当にもう…」
ゴシッと唇の感触をこすり落とすようにして、頬を手の甲で触れた。
意識せずにいようとしても、返ってその感触が肌の奥に入っていくような気がする。
……結局、卵焼きの味付けは、出汁以外のものを入れるのを忘れてしまった。
味など何もしなかった筈だけど、兵藤さんは特に怒ったりもしなかった。
卵焼きの他にもコーンやパプリカを使ったおかずを作って出した。
ご飯の上には黄色の沢庵漬けをてんこ盛りに乗せていたから、多少のことは気にならなかったと思う。
さっきの事を聞きたくて食事している間、彼の様子を窺った。
変な人だとは思っていたけど、寝ボケると女性に手を出す性格だとは思わなかった。
「あの……」
食べ終えた人に向かって、困ったような目線を向ける。
「おかわりなら要りませんよ」
私が言いたいのはそんなことじゃなくて。
「…そうですか」
無言で手を合わせる人が椅子から立ち上がって逃げようとする。
その後ろ姿を見送りながら、さっきのは単純に事故なんだ…と知った。
こんなふうに意識しているのは私だけで、寝ぼけていた彼は特に思い出そうともしてない。
なんとなくショックを覚えながら食器をトレイに乗せる。
軽いキスをしたことよりも芸術家の彼にとっては、もっと大事なことが多くあるんだろうな…と思う。
ゴシッと唇の感触をこすり落とすようにして、頬を手の甲で触れた。
意識せずにいようとしても、返ってその感触が肌の奥に入っていくような気がする。
……結局、卵焼きの味付けは、出汁以外のものを入れるのを忘れてしまった。
味など何もしなかった筈だけど、兵藤さんは特に怒ったりもしなかった。
卵焼きの他にもコーンやパプリカを使ったおかずを作って出した。
ご飯の上には黄色の沢庵漬けをてんこ盛りに乗せていたから、多少のことは気にならなかったと思う。
さっきの事を聞きたくて食事している間、彼の様子を窺った。
変な人だとは思っていたけど、寝ボケると女性に手を出す性格だとは思わなかった。
「あの……」
食べ終えた人に向かって、困ったような目線を向ける。
「おかわりなら要りませんよ」
私が言いたいのはそんなことじゃなくて。
「…そうですか」
無言で手を合わせる人が椅子から立ち上がって逃げようとする。
その後ろ姿を見送りながら、さっきのは単純に事故なんだ…と知った。
こんなふうに意識しているのは私だけで、寝ぼけていた彼は特に思い出そうともしてない。
なんとなくショックを覚えながら食器をトレイに乗せる。
軽いキスをしたことよりも芸術家の彼にとっては、もっと大事なことが多くあるんだろうな…と思う。