『ココロ彩る恋』を貴方と……
「あ……目が覚めた?」


後ろから声がして、河井さんが顔を覗かせる。


「大丈夫?具合はどう?」


黙っている兵藤さんとは対照的に近寄り、どれどれ…と額に手を乗せる。



「まだ下がってないわね」


はぁ…と短く息を吐く。



「……あの……私……」


嗄れた声がどこか祖父を思い起こさせた。妙なところで血の繋がりを思い、何故ここに寝ているんでしょう…と続けた。


「倒れたそうよ」


記憶にないの?と問われ、こくっと首を縦に振る。


「昂さんの前で気を失ったらしいわ。それで此処に運ばれたの」


誰が運んできたのかは言わなくてもわかる。

私と兵藤さん以外、この家には誰もいなかったんだから。


「血相変えて電話してくるんだもん。ビックリしちゃって」


河井さんは笑いながらベッドの足元に佇む彼を見た。


「ほら、そんな所にいないでこっちに来れば?声くらい掛けてやりなさいよ」


お姉さんの様な口振りで呼び、作務衣の裾を引っ張る。トレイを抱えた人は私の方へ振り向き、手に持っていたトレイごと近付いてきた。



「お粥作ってみた。食べれる?」


「えっ……」


思わず耳を疑った。


兵藤さんがお粥を作った!?

今聞いた台詞は夢なんかじゃないよね?


「昂さんてば、食事以前に体調を確かめてやって」


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