『ココロ彩る恋』を貴方と……
湯気を吹き飛ばしたお粥が口の中に入り込み、その温度にビクビクしながら唇を閉じる。


(熱っ……くない……)


一瞬閉じた瞼を開けて顔を見る。

兵藤さんが間違いなく私だけを見ている。


「どう?」


これは味を聞いているのよね。


「……ま、まぁ食べれそうです……」


味もわからないくらい緊張していたらしい。

答えを聞いた兵藤さんはホッとした笑みを見せて「もう一口」と声を発した。


大人しく言うことを聞いて、何口か続けて入れてもらう。薄い塩味だけがするお粥は、意外にもあっさりと喉を通った。


「美味しい……」


少し声が出易くなった気がして感想を述べると、兵藤さんの顔が思いの外嬉しそうに綻んだ。


(わっ……らってる……)


唇が薄く横に広がって、端がきゅっと窄まっている。

こんな顔して笑うんだ。

ぼぅっとしている顔しか記憶になかったから新鮮すぎて仕方ない。


「良かったわね、昂さん。満仲さんから褒めてもらえて」


横から声がしてハッとした。そうだ、河井さんが居たんだ。


「俺が言った通りの白粥で正解だったろう」


自慢そうに言い返している。

仲睦まじそうな二人の間に入るには、やっぱり無理って感じがしてくる。


「あの……もうお腹いっぱいになったからいいです……」


次を入れようとしてくれた人に断りの言葉を言った。


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