『ココロ彩る恋』を貴方と……
兵藤さんは少し肩を落として、残念そうに了解する。
「…そうか。じゃあ後はゆっくり寝ていいから」
手に持っていた器を下げ、布団を掛け直して離れた。
「私が付いていてあげるわ」
河井さんに言われ、「頼む」と答えて部屋を出て行く。
パタン…と閉まるドアを見つめ、きゅん…と胸の奥が軋んだ。
「大丈夫?気分悪くない?」
ぼぅっとドアの方を見ている私に声をかけてきた女性を見直す。
「…はい…大丈夫です」
さっきよりも少しはっきりと返事ができた。
「昂さんから電話が来た時は焦ったわ。貴女に何が起きたのかってくらい、大慌てだったんだもの」
「そんなに、ですか?」
「ええ。きっと倒れた貴女を見て思い出したのね。半年前に起きた事故のことを」
「半年前の事故?」
「そうよ。家族を亡くしたと言ったでしょ。妹さんを失ったの。彼にとっては、誰よりも大切な家族だったのに」
「妹さん……」
聞き返した私に頷き、河井さんは話し始めた。
「昂さんの妹は彩(さやか)さんと言って、奇しくも私と同じ名前なの。昂さんのお母さんは彼が高校一年生の時に彩さんのお父さんと再婚して、二人は義理の兄妹になった。
でも、その頃から既に、彩さんの目は光を失いかけていたの…」
閉ざされている彼の目の理由がわかろうとしていた。
あの黒い色に覆われてしまう前の明るい色達。
それは闇になっていく妹さんの目を思い、彼が描いてきた世界だったーーー。
「…そうか。じゃあ後はゆっくり寝ていいから」
手に持っていた器を下げ、布団を掛け直して離れた。
「私が付いていてあげるわ」
河井さんに言われ、「頼む」と答えて部屋を出て行く。
パタン…と閉まるドアを見つめ、きゅん…と胸の奥が軋んだ。
「大丈夫?気分悪くない?」
ぼぅっとドアの方を見ている私に声をかけてきた女性を見直す。
「…はい…大丈夫です」
さっきよりも少しはっきりと返事ができた。
「昂さんから電話が来た時は焦ったわ。貴女に何が起きたのかってくらい、大慌てだったんだもの」
「そんなに、ですか?」
「ええ。きっと倒れた貴女を見て思い出したのね。半年前に起きた事故のことを」
「半年前の事故?」
「そうよ。家族を亡くしたと言ったでしょ。妹さんを失ったの。彼にとっては、誰よりも大切な家族だったのに」
「妹さん……」
聞き返した私に頷き、河井さんは話し始めた。
「昂さんの妹は彩(さやか)さんと言って、奇しくも私と同じ名前なの。昂さんのお母さんは彼が高校一年生の時に彩さんのお父さんと再婚して、二人は義理の兄妹になった。
でも、その頃から既に、彩さんの目は光を失いかけていたの…」
閉ざされている彼の目の理由がわかろうとしていた。
あの黒い色に覆われてしまう前の明るい色達。
それは闇になっていく妹さんの目を思い、彼が描いてきた世界だったーーー。