『ココロ彩る恋』を貴方と……
「何故二人だけで暮らそうとしたんですか?ご両親は一緒に住む予定はなかったんですか?」
「ないわよ」
「どうして?」
聞き返す私に笑みを見せ、河井さんは寂しそうに答えた。
「二人は結婚する予定だったの。だから、この家は新居のつもりで建てられたのよ」
体の奥から鈍い音が響いた。
『君のことは見ないと思う』と言った彼の言葉の意味が、やっと理解できた。
「愛し合っていたのに不運な事故に遭ってしまったの。昂さんの目の前で起きた事故だったから、彼は今でも忘れられないみたいで……」
『鎮魂歌(レクイエム)』
そう名付けられた版画のことが頭を過ぎった。
(……あの長い髪の女性は……妹さんのことだったんだ……)
「魂の拠り所を探すように、昂さんは彩さんを版画に彫り続けてきた。なのに、その作品は高い評価を受けてしまったから、誰の目にも留まらない場所に隠しておきたかったのに、そうもいかなくなってしまったの。
……あの事故以来、昂さんは彩さん以外のものが描けなくなった。彫っても彫っても行き場所が見つからないようで、何枚も何枚も、彫り続けているの……」
話される言葉を信じたくなくて、耳の前で手を握った。
全てがあの黒い色の理由のように思えて切なくて、胸がキリリと痛んだ。
私以上の暗い過去を背負って……兵藤さんは生きているーーー。
「ないわよ」
「どうして?」
聞き返す私に笑みを見せ、河井さんは寂しそうに答えた。
「二人は結婚する予定だったの。だから、この家は新居のつもりで建てられたのよ」
体の奥から鈍い音が響いた。
『君のことは見ないと思う』と言った彼の言葉の意味が、やっと理解できた。
「愛し合っていたのに不運な事故に遭ってしまったの。昂さんの目の前で起きた事故だったから、彼は今でも忘れられないみたいで……」
『鎮魂歌(レクイエム)』
そう名付けられた版画のことが頭を過ぎった。
(……あの長い髪の女性は……妹さんのことだったんだ……)
「魂の拠り所を探すように、昂さんは彩さんを版画に彫り続けてきた。なのに、その作品は高い評価を受けてしまったから、誰の目にも留まらない場所に隠しておきたかったのに、そうもいかなくなってしまったの。
……あの事故以来、昂さんは彩さん以外のものが描けなくなった。彫っても彫っても行き場所が見つからないようで、何枚も何枚も、彫り続けているの……」
話される言葉を信じたくなくて、耳の前で手を握った。
全てがあの黒い色の理由のように思えて切なくて、胸がキリリと痛んだ。
私以上の暗い過去を背負って……兵藤さんは生きているーーー。