『ココロ彩る恋』を貴方と……
「満仲さん?」


声をかけられて河井さんを振り返った。

涙がボロリ…と溢れて、溢れ出すように流れているのを知った。


「ごめんね。こんな話、具合の悪い人に聞かせたらいけなかったわね」


もう止めましょう…という人の腕を握り、首を横に振った。


「教えて下さい…。もっと……全部を知りたいです……」


謎だらけな行動の意味を全部解き明かして欲しい。

謎が解けたら彼を抱きしめて、心を温めてあげたい。


「私…兵藤さんのことが好きです。だから、彼のことを何もかも…知っておきたいんです……」


例えそれがどんなに辛くて悲しいことでもいいから教えて。

深くて暗い闇を抱えているなら、それが何かを突き止めておきたい。


驚いた目をして河合さんが黙った。
口を閉ざしたまま神妙な顔つきになり、窺うように聞き返す。


「彼は貴女のことを見てはくれないと思うわよ。それでもいいの?」


「いいです。それでもいいから、兵藤さんのことを教えて下さい」


頼み込むように身を起こしていた。

さっき口に入れてもらったお粥のお陰か、少しだけ体の痛みが取れている。


「…いいわ。あのね……」


口を開いて明かされた過去は、美しく彩りに満ちた日々が、急に暗転に落ちたことを示していた。


(私とは正反対だ……)


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