『ココロ彩る恋』を貴方と……
真っ暗な闇に覆われてしまう前の下絵。
それは結婚して幸せに暮らしていくはずだった未来が、交通事故という名の不幸で染まったことを表していた。
「あの日は、昂さんの絵が近代絵画美術展で金賞を受賞したと報告があったの。
地方の個展会場から家に帰ってくる途中でそれを聞いた昂さんは、直ぐに彩さんに連絡をとった。
話を聞いた彩さんは居ても立っても居られず、彼を迎えに家を出たの。白杖を持たずに出てしまって、あまり見えもしない世界を彷徨い歩いていた。
偶然にも、道路の向かい側から彼女の存在に気づいた昂さんが名前を呼んで、それに反応するようかのように飛び出した彼女は、車の事故に巻き込まれてしまったの……」
進行してきた車にはね上げられ、彼女の体は3メートル先の道路に転がっていった。
車にはねられた瞬間も、道路に落ちていく瞬間も、全てが一連のストップモーションように見えた…と、兵藤さんは抜け殻のような顔つきで警察関係者に語ったそうだ。
「何もできなくなってしまうんじゃないかと思うくらい酷い落ち込みようだった。
絵を描くことも、版画を彫ることもできなくなるんじゃないかと、心配するくらいだったのよ……。
でもね……
彩さんが生きていたことを忘れたくないと思う気持ちが、彼の創作意欲を呼び起こしたの。
版に彼女を彫り続けていくことで、今もなんとか生きているの……」
それは結婚して幸せに暮らしていくはずだった未来が、交通事故という名の不幸で染まったことを表していた。
「あの日は、昂さんの絵が近代絵画美術展で金賞を受賞したと報告があったの。
地方の個展会場から家に帰ってくる途中でそれを聞いた昂さんは、直ぐに彩さんに連絡をとった。
話を聞いた彩さんは居ても立っても居られず、彼を迎えに家を出たの。白杖を持たずに出てしまって、あまり見えもしない世界を彷徨い歩いていた。
偶然にも、道路の向かい側から彼女の存在に気づいた昂さんが名前を呼んで、それに反応するようかのように飛び出した彼女は、車の事故に巻き込まれてしまったの……」
進行してきた車にはね上げられ、彼女の体は3メートル先の道路に転がっていった。
車にはねられた瞬間も、道路に落ちていく瞬間も、全てが一連のストップモーションように見えた…と、兵藤さんは抜け殻のような顔つきで警察関係者に語ったそうだ。
「何もできなくなってしまうんじゃないかと思うくらい酷い落ち込みようだった。
絵を描くことも、版画を彫ることもできなくなるんじゃないかと、心配するくらいだったのよ……。
でもね……
彩さんが生きていたことを忘れたくないと思う気持ちが、彼の創作意欲を呼び起こしたの。
版に彼女を彫り続けていくことで、今もなんとか生きているの……」