『ココロ彩る恋』を貴方と……
朝になると不思議と体は軽かった。熱っぽさは取れ、楽に上半身も起こせる。


「うーーん!」


思いきり背筋を伸ばしても痛くない。この調子なら、いつも通りに動いても平気そう。


「…あら、起きたの?」


ノックもなく開いたドアの向こうから河井さんが入ってきた。


「おはようございます。昨日はどうもすみませんでした。着替えまで用意して頂いて、おかげで今朝は体も軽いです」


ベッドから足を下ろしてお礼を言うと、河井さんは柔かな笑みを浮かべて近寄ってくる。


「いいのよ。それよりも熱は?」


触るわね…と言い、額に手を乗せる。


「うん、なんとか下がってるみたい。でも、今日は1日寝ていなさい」


「でも、それじゃ兵藤さんが困るし…」


私なら大丈夫です…と拒った。でも、河井さんは了解しない。


「たまには休養も必要よ。昂さんのことなら心配しなくても平気だから。ああ見えて彼は、家事一般は何でもこなせるの」


掃除以外はね、と付け加える。唖然とした私に目を向け、「どうかした?」と聞き返してきた。


「あの……もしかして家政婦を雇ったのは初めてですか?」


信じられない気持ちで聞いた。


「勿論、初めてよ」


河井さんはあっけらかんとそれを認める。


「昂さんはこの家に誰かが入るのは嫌だったの。でも、あまりにも家の中が乱雑過ぎて、私が我慢できなくなったから協会に登録したの」


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