『ココロ彩る恋』を貴方と……
囁く女性の目線を辿り、同じようにカラフルな紙が貼られた障子戸を見た。


「自分が良い様に貼ってもいいかとは聞かれましたが、理由については聞いてないです」


障子に貼る和紙を買いに行くと言うから切れ端を渡した。捨ててしまうのも惜しいし、使えるものがあるなら使って欲しいと思った。


「あの子が育った家では、障子の貼り替えはいつもお爺ちゃんがされていたんだそうです。

綺麗な色の紙が沢山貼られてあって、それに日が差すと絵みたいに見えて綺麗だった…と言っていました」


これはその真似です…と笑った。

貼っている彼女の姿を見たことはなかったが、そういう理由があったのか。



「…くすっ」


不意に笑いの溢れた女性に目を遣ると、クスクス…と笑いだしながら思い出話を始めた。


「紫音ちゃんが家政婦協会で働き始めた頃、掃除以外の家事が何も出来なくて。料理も洗濯も、一から全部教えたんです。

お爺ちゃんからは何も教わらなかったのかと聞いたら、『お爺ちゃんは私に何もやらせてくれなかったし、やるようにも言わなかったです』と答えたの。

普通はそれでもやりたかったらやるんでしょうけど、あの子は幼い頃の抑制が効き過ぎて、変にその辺りが素直で聞き分けが良くて。

…きっとお爺さんもそれをわかっていらしたから、敢えて紫音ちゃんには何もさせてこなかったのではないかと思います。


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