『ココロ彩る恋』を貴方と……
『………ごめん』
目を伏せて謝ると、ぎゅっと抱きつかれた。
震える肩に手を乗せると、更に力を込められた。
『……お兄さん』
名前ではなく兄として呼ばれた。
その言葉の意味を噛みしめながら、背中に腕を回した。
『……頑張って。誰にも負けない作品を作って……』
彩の声は力強かった。意思を込めて、俺に言葉を投げ掛けたーーー。
ーーーーーーーーーーー
「さやか……」
あの時に感じた思いを、俺は今も絵にしている。
色鮮やかな下絵は、紛れもなく彩に見せたかった世界だ。
霞んでいくばかりの視界を少しでも綺麗な色で染めてやりたくて、完全に見えなくなる前に全てのものを彩って表現してやりたかった。
………なのに、俺が全てを奪った。
辛うじてまだ、見えていたのに…………
「さやか……済まない……」
謝っても謝りきれない過ちを犯してしまった。
光を失いかけていた妹の命を、二度と還らないものにしてしまった……。
せめてもの償いに…と、自分の絵の中に閉じ込めた。
見たいと言っていた世界を、あの目に焼き付けてやりたかった。
美しい色が出せたら見せよう。
濁りのない鮮やかな色彩を描こう。
欲しても欲しても辿り着けない思いがあった。
描いても描いても、彩が真っ黒になっていった………。