『ココロ彩る恋』を貴方と……
『私…このモデルの人が嫌い。あんな綺麗なブルーをこんな色に染めてしまうなんて……』


……雰囲気が似てる女性が言った。

喋り方も背格好も、何処か妹を思わせていた……。



(それで間違えたのか?それとも、きちんと認識できていた?)


初めて見た時から天使のようだと思った。

幸せを返しに来たのかと、問いかけたい心境が高まった。



『胸に手を当てて考えてみて下さい!!』


彼女が通い始めて直ぐの失態は、何をやらかしたのか見当もつかなかった。

怒り方からして、良からぬ事をしたんだと焦った。


妄想を行動に移すなんて愚かすぎる。

彩の事故以降、飲み続けている薬のせいだと思った。


(あれを飲むのはやめよう。このまま飲み続けていたら、いつか自分が壊れていく……)



眠れなくなるのは覚悟の上だった。

最初のうちは慣れなくて、ぼうっとした世界を彷徨ってばかりいた。



(……あれも、彼女だったのか……)


彩と間違えて抱きしめた。良い香りがするから、唇を押し付けてしまった……。



「さやか……」


こんなふうに抱いてやりたかった。

あいつが兄だと言わなければ、俺は一線を越えていたかもしれない……。


ドンッ!と突き放されて我に戻った。目の前にいる女性が、ぎゅっと唇を噛んでいる。


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