『ココロ彩る恋』を貴方と……
『……バカね。あれは事故なのよ。貴方のせいでもなければ、彩さん本人が悪かったわけでもない。

運が悪かっただけなのよ。防ぎようのないことだったの』


彼女のことは大丈夫だと言われた。

抱き締めていた体を、俺がずっと離さなかったせいだ………。



「これがバレたら、また怒られるのかな…」


幼い告白をさらりと流してしまった。

俺しか見えないような恋なら、しない方がいいと思った。


俺は彩を失ってから彩りのある生活を捨てた。

色彩なんかを求めてはいけない。彩を闇の中に葬ってしまった自分が、色を求めてはいけない…と感じた。


食事もカラフルな物を食べるのは止めた。

下絵を真っ暗な色で覆い尽くして、全てを葬り去りたいと描いた。


彩にだけ、あの美しさが見えればいい。

純粋な子供の様な妹に、俺の人生の全てを捧げようと思った。


……なのに、彼女が目の前に現れた。


ぼんやりとする世界で、チョロチョロと動き回る。

俺に話しかけ、強制し、大きな叫び声まで上げる。

辿々しい包丁の音も、賑やかな調理の声も、パタパタ…と叩きをかける音も、掃除機の騒音でさえも、全てが現実だと教える。


俺はこの世に生きてる。

暗闇を彷徨っている訳じゃないと語る。


やりきれないものを覚えながらも、通ってくる彼女を探す日々を過ごしていた。


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