『ココロ彩る恋』を貴方と……
優しさは降り積もって
１１月が過ぎ、師走に入った。

街のあちこちから聞こえるクリスマスソングに耳を傾け、急ぎ足で買い物を済ます。


「ふぅ。重い…」


腕に掛けたレジ袋の重さをズシリと感じる。

私は今、５人家族の家で家政婦をしている。

共働きの家庭で家事を任されていたお婆ちゃんが急なギックリ腰になり、身動きが取れなくなってしまったのだ。


「紫音ちゃんにそのお宅の家事を手伝って貰おうと思うんだがいいかい？」


所長さんから話を回された時、我が儘を聞いてもらった手前もあり、「嫌です」とは言い難かった。


「はいっ、頑張ります！」


外見上は張りきって引き受けた。師走に入れば大掃除の仕事が後を絶たない中、１人だけが別の仕事をしている。



（そう言えば、奥さんの方はどうだろう……）


私に代わって兵藤さんとこの家政婦を務めている。残念ながら協会の事務所で会ったことがなく、その後の様子は聞けてない。


（もうすぐ個展も終わるよね……）


１１月半ばに始まった個展は、１２月２０日が最終日。

貰ったチケットは今も変わらずバッグの中に埋もれている。あれから何度か観に行こうとしてみたけど、結局勇気が出せずに戻った。


（……見ても辛くなるだけじゃないの？）


悲しくなるだけなら見ない方がいい…と、気持ちが引きこもってしまった。

ガサガサ…とスーパーのレジ袋を揺らして雇い主のお宅に戻れば、腰痛で動けないお婆ちゃんがあれこれと指図する。


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