『ココロ彩る恋』を貴方と……
私のやることは一々気に入らないらしく、時には嫌味も繰り返される。


「…全く近頃の若い人は、家事もまともにこなせないんだから」


古いお姑さんタイプの人だとは聞いていた。優しい祖父しか知らない私にとっては、何処か母を連想させた。


(我慢して紫音。この人は自分が動けないからイライラしてるだけなの)


本当なら起き上がって自分がバリバリと家事をこなしたいんだ。だけど、完治までに2週間はかかると医師に宣告されてしまった。

体は動かせないけど口は達者だ。毎日の献立決めも全部自分がやっていた。


「今夜は寒いからお鍋にしよう。材料は買って来てあるだろ?」


私はスーパーの袋を手にしてお婆ちゃんのベッドへ向かう。


「しらたきに白菜にネギ……おや、椎茸は?」


「あっ!買い忘れました!」


「あんた何の為に買い物に行ったの!…全く使えないったらありゃしない」


「す…すみません。直ぐ買いに行きます!」


「もういいよ、あと30分もしたら孫達が戻って来るし、その前におやつの準備もしておかないと煩いから。今夜は椎茸なしの鍋にしよう。…となると、一体何がいいもんかねぇ……」


こんな時、気の利く家政婦ならすんなりとメニューも浮かんでくるはずだ。

でも、私は何も浮かばず黙り込んだ。


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