『ココロ彩る恋』を貴方と……
(今夜はキツネうどんにしよう。他に食べるとしたら何がいい?)


取り敢えずミカンは家にあった。先週の日曜日に特売をしていて、ビタミンはそれで補うつもりで買った。


(野菜はどうする?お肉やお魚に変わるものと言えば何がある?)


歩いていればあれもこれも…と目がいく。でも、そのどれも手に取る気にはならない。


(うどんとミカンだけでいいや。それだけ食べてさっさと寝よう)


お婆ちゃんのお眼鏡に叶うように…と、毎日の掃除だけは頑張っていた。

子供がどんどん散らかした後を追いながら片付け、両親が出勤するまでに散らかしていった場所を整える。

たった4人しかいないというのに、どうしてこんなにやることが生まれるのか。


(生きていく…って、こんなに忙しいものだったっけ?)



どうだろうか。

家庭というものを知らずに過ごしてきた私には、見当もつかないことが多過ぎる。

お爺ちゃんとの暮らしはマイペースだった。兵藤さんの家でものんびりとやっていた。



(あそこはある意味、極楽だったのかな……)


彼のことを好きにならなければずっと務められていたんだ。

嫌な思いもせず、のんびりと構えられていた。



(でも、好きになったんだもん。仕方ないよね……)


思い出しても胸の奥が熱くなる。兵藤さんの顔を思い浮かべるだけで、きゅんと心臓が疼く。



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