『ココロ彩る恋』を貴方と……
亡くなる日も親に捨てられたのは私のせいじゃないと言ってくれた。

『お前は素直な子だ…』と、嗄れた声で褒めてくれたーーー。



(それなのに、私は…それに反するような行動を起こした……)



お爺ちゃんの励ましさえも裏切った。

家政婦としてやってはならない事をした。


もう駄目だ。

我が儘を聞いてもらってばかりいたのに、一番最悪なことを仕出かした……。



(協会の信用を潰した……私はもう、あそこへは行けない……!)



祖父が亡くなってからずっと、所長さんや奥さんに助けられてきた。

見守られて、慰められて、励まされてきたのに……。


(いっぱいいっぱい…優しさを降り積もらせて貰ったのに……)



何もかもを台無しにした。

わたしにはもう、行く場所が無いーーーー。





コートも着ずに飛び出していた。


寒空の下、真っ白な息だけを身に纏っていた。




< 193 / 260 >

この作品をシェア

pagetop