『ココロ彩る恋』を貴方と……
窺うような視線が注がれる。
そんな目を向けられる程、私はいい人間じゃない。


「ごめんなさい……そんなに優しくして貰える人間じゃないんです…私……」


ぼろぼろと涙を溢しながら謝った。

河井さんは意味がわからない様子で、何があったの?…と聞き直した。


…何も言いたくなくて押し黙った。河井さんは困ったように窺い、小さく息を吐いた。


「……仕方ないわね。昂さんに聞いて貰おうか?」


ギクリとして顔を上げた。
私の気持ちを知っている人は、わざとそう言ったみたいだった。


「嘘よ。聞いて貰いたくても今は無理なの。お得意様との商談中でいないから」


自分も其処へ向かうところだった…と言う。


「商談が終われば此処に戻って来る筈よ。話はその時に聞いてもいいけど……」


試すように表情を眺め、どうする?と聞いた。



(……兵藤さんには知られたくない……)


怒りでカッとしたからと言って、お婆ちゃんに皮肉を言い、更に足まで振り上げたなんて言えない。


思い悩んだ末に重い口を開いた。
河井さんは真剣な表情で聞き、私の言葉を受け止めようとしていた。


「雇われてた先のお宅で……お婆ちゃんに嫌味を言われたんです……。家事ができないのは……私に家族がいないからだろうって……。それで、頭にきて……」


話しだしたら涙が溢れてきた。


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