『ココロ彩る恋』を貴方と……
この部屋をここまで散らかしたのは誰か。
言わずと知れたこの家の家主で、現在３５歳になろうかという芸術家の彼である。

どうやら家事は苦手分野らしく、物を出しても片付けるということができない人のようだ。


「……だったら何も出さないでよね」


新聞紙を日付ごとに重ねてたたむ。

こんなにバラバラにして読む人なんて初めて見たよ、私。


「あーあ、本棚までグチャグチャ」


仕事で使う物は自分の仕事部屋に置いとけばいいのに、広く使いたいからとの理由で、資料となるものは全てこの部屋に置かれてある。

いろんな芸術家の作品集や専門書、画材屋さんのチラシやパンフレットに至るまで様々あって、思い立つとそれを棚から抜き取って確認しているらしいのだが。

確認すると満足なのか、後はそのまま放置で終わり。
一切棚に戻したり整理したりとかいうのはなくて、片付けるという観点すらも持ち合わせていない人のようなんだ。


おかげで私が一番最初にこの部屋に入った時は、部屋中に本と紙とゴミが散乱していた。
それらの上には薄っすらと埃が降り積もり、いつからそこへ置いてあるのかもわからない様な状態だった。

あまりの埃っぽさに息を吸うのも嫌で、初めて来たお宅にも関わらず、バタン、バタンと部屋中の窓を開けたらーー


< 2 / 260 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop