『ココロ彩る恋』を貴方と……
その後もずっと暗い色調の絵ばかりが続いた。
下絵も彩さん本人も、暗黒の闇を背負い続けているみたいな絵だった。

私が非難した絵のタイトルは『慟哭』だった。
自分を許せない兵藤さん本人の気持ちを表していると感じた。


(失敗作だと言ってたもんね……)


そんなに激しく悲しんだのか。彼女の代わりに自分が死ねばいい…とでも思ったんだろうか。


(それであのシーブルーの下絵も闇の中に葬ったの?)


微かな色さえも浮き出ないほどに黒く染められている絵。それを見据えたまま次のコーナーへと進んだ。


『点』と書かれたコーナーには、黒い絵の中に点が一つ浮き彫りにされている。

彩さんの涙は枯れ、虚ろに開かれた目だけが表現されていた。


(起き抜けの兵藤さんの顔だ……)


ぼんやりとした眼差しを庭に向けていた。
点で表されている色は、金木犀のオレンジ色にも似ている。


その点が少しずつ増えていく。
少しずつ大きく、ハッキリとした色合いになっていく。


(……あ……山茶花……)


花の色が黒ではなく、濃い真紅に染まっている。輪郭だけが黒で表現され、明らかに花だと見えた。


(これが奥さんの言ってた変化?)


闇に近い絵に少しずつ光が差してくる…と言っていた。

ほんのりと明るい差し色は花だったり、落ち葉や木の実だったりする。


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