『ココロ彩る恋』を貴方と……
その中で彩さんの表情が豊かになっていく。
虚ろに開いていた目が見開き、色を追いかけるようにも見えた。



(やっぱり凄い……)


革命児だと言われている人はどんな苦しみも自分の作品の肥やしにしている。
心の中に広がる闇も何もかも、全部を表に出しながら変化している。


(これが闇の中から見えた世界……)


雲から月が顔を覗かすように、少しずつ彩さんの黒が薄い色に変化している。

どす黒いブラックが単純な黒になり、グレーが混ざったり、紺が混ざったりしていく。


点はやがて線に変わり始めた。
その線が交差して光となり、無数に表現されている。


(星……?星座……?)


暗黒を照らすものが掘り出された後、あの群青色の絵が視界に飛び込んできた。


『夜明け』


そうタイトルの付けられた絵は、彩さんの周囲が眩い光で包まれているように見えた。
沢山の長い線が交錯し合い、その線の色は全てシルバーとラメで輝いている。


(日の出前の景色だ……)


群青色の闇が終わりを告げて朝を迎える。その一瞬を、この絵が表している。


(綺麗……)



思わず立ち竦んで見てしまった。
刷り上がった時に感じた神々しさは、変わらず心を惹きつけた。



ーーー小さな動悸がしてくる。

最初の絵から見ると、確かに兵藤さんの絵が変化している。

色が増え、暗さが変わり、光までが加わった。


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