『ココロ彩る恋』を貴方と……
心を彩るものは……
「ずっと待ってたんだよ」
柔らかい口調でそう言うと、兵藤さんは私の側に立った。
「なかなか現れそうにないから、もう会えないのかと覚悟した」
苦笑した笑みを見せて話す。その顔を見ることができなくて、私は視線を外した。
私達の前にはパステルカラーの版画があった。
白線で浮き彫りにされているのは、クルクルと髪の毛が巻かれてある「天使」ーーー
「これが俺の目に映った君」
版画を指差した人はそう言って、私のことを見下ろした。
明るい絵の中で、私と称される天使は嬉しそうに口角を上げて微笑んでいる。
ぷっくりと頬を膨らませて、何かを口に含んでいる様にも見える。
「初めて一緒に食事した時の横顔。あんまり嬉しそうだったから、つい板に描いてしまった」
困った様な笑みを見せられた。そんなものを描いていたとは知りもしなかった。
「君に見られたらまずいと思って、仕事場にも入ってこないよう言ったんだ…」
照れ臭そうな顔をする。その顔に一体どんな表情を向ければいいのか。
「……私のことは映らないって言いましたよね」
恨みがましい言葉を口にする。
兵藤さんの目は、彩さんだけを追っていた筈だ。
「うん…。俺もまさかこうなるとは思ってなかった…」
戸惑うように私を見て、隣に掛けてある彩さんの絵を眺めた。
柔らかい口調でそう言うと、兵藤さんは私の側に立った。
「なかなか現れそうにないから、もう会えないのかと覚悟した」
苦笑した笑みを見せて話す。その顔を見ることができなくて、私は視線を外した。
私達の前にはパステルカラーの版画があった。
白線で浮き彫りにされているのは、クルクルと髪の毛が巻かれてある「天使」ーーー
「これが俺の目に映った君」
版画を指差した人はそう言って、私のことを見下ろした。
明るい絵の中で、私と称される天使は嬉しそうに口角を上げて微笑んでいる。
ぷっくりと頬を膨らませて、何かを口に含んでいる様にも見える。
「初めて一緒に食事した時の横顔。あんまり嬉しそうだったから、つい板に描いてしまった」
困った様な笑みを見せられた。そんなものを描いていたとは知りもしなかった。
「君に見られたらまずいと思って、仕事場にも入ってこないよう言ったんだ…」
照れ臭そうな顔をする。その顔に一体どんな表情を向ければいいのか。
「……私のことは映らないって言いましたよね」
恨みがましい言葉を口にする。
兵藤さんの目は、彩さんだけを追っていた筈だ。
「うん…。俺もまさかこうなるとは思ってなかった…」
戸惑うように私を見て、隣に掛けてある彩さんの絵を眺めた。