『ココロ彩る恋』を貴方と……
「周りが救急車を呼んでくれて、警察に電話を掛けた。俺はただ彩の手を握って、名前を呼び続けることしかできなかった……」


……同じだ。私も祖父の手を握ることしかできなかった…。


「病院に運ばれていく間も救急隊員に色々と聞かれてた筈なのに覚えが無いんだ。隊員の話では、きちんと冷静に答えていたそうなんだけど……」



わかる……。
それ程混乱してたんだよね……。


「それからずっと眠れなくなった。目を閉じるとあの日のことを忘れてしまいそうで、覚えておかないといけない気がしていた。記憶を薄れさせたくないと、ずっと気を張っていた……」


そこが私とは正反対だ。
私は思い出したくなくて、全て忘れたくて仕様がなかった……。


「医者から無理矢理薬を飲んで寝るよう言われた。俺のことはほっといて欲しかったのに、周りが生きろと言うんだ……」


声を詰まらせた人を見上げた。
目の奥に潤んでいるものを見て、ぎゅうと胸の奥が軋む。


「俺は生きていなくても良かった。彩の代わりに生きていても、何もできない気がした……」



(……それ程、愛してたんだよね……)


言葉に出せず彼のことを振り返った。潤んだ瞳がこっちに向けられ、その目尻に浮かんだものを見ていた。


「…大事な存在だった。俺の絵を認めて、ヤル気にさせてくれたのは…彩だったから……」


告白にも似た言葉を受け止め、つぅんと鼻の奥が痛む。


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