『ココロ彩る恋』を貴方と……
(……やっぱり失恋だな……)


思っていた通りだ。


「彩は俺の大事な妹だった。親同士の再婚で兄妹になって、血も繋がってなかったけど慕ってくれた。

『お兄さん』と呼ぶのが好きな子で、俺も彩にそう呼ばれるのが好きだった……」



「えっ……」


河井さんから聞かされてた話を違う。
2人は結婚を予定している仲だったんじゃないのか。



「……あの」


聞き直そうとしたら微笑まれた。


「河井さんが君に嘘を吐いたんだって。俺が彩と結婚する予定で、あの家を建てたと聞いたんだろう?」


キョトンとしている私は唖然としながら首を縦に振った。


「ごめん。あの人は冗談が酷くて。広報部長としても俺を女から守るのが役目だと信じてるんだ」


ぽかんとしていると、目尻を潤ませていた雫を掬われた。


「聞いたよ。派遣先でパニックを起こしたんだってね…」


潤んでいた瞳が乾いて、私のことを気にしている。


「此処へ戻ってくる最中で森元さんから連絡が入った。
もしも君が個展を観に来るようなことがあったら、何も心配しなくていいから…と、伝えておいて欲しいと頼まれた。

雇い主のお婆ちゃんは言い過ぎたと謝ってたらしいよ。息子さん夫婦も、君には甘え過ぎだったと言っていたって」


自分のやったことを思い出して震えがきた。
オドオドとしだす私を見て、兵藤さんが近づいてくる。


< 209 / 260 >

この作品をシェア

pagetop