『ココロ彩る恋』を貴方と……
「私を決して怒ることもなく育ててくれた……。
『紫音はいい子だね』って…ずっと呪文のように言い続けてくれた…。

……いいお爺ちゃんだった……誰にも負けないくらい、いい家族だった……」


だからこそ悔しかった。
何も教えられてないことが、全部祖父の責任のように言われてーー。


「……うん……お爺さんは、君の心を守ってくれたんだね」


髪を撫でてていた人の手が頬を包んだ。


「……君の心の傷を癒して、愛を教えてくれたんだ…」


「………っ!」


大声で泣きそうになって堪えた。
兵藤さんの言葉が的を得すぎてて、胸がいっぱいになってしまった。


「立派な人だ。だから君は今、こうして此処にいる……」


ふわっと背中に腕を回された。優しく抱き留められて、スーツの生地に頬があたった。


「俺は君のお爺さんに感謝してる。満仲紫音さんに出会えた事を心の底から嬉しいと思う。

君は俺を闇から救ってくれた。あの家に君が来てから、俺の時間は動き出した。

薬を飲まなくても眠れるようになった。誰かが居ることが楽しいと気づけた。

生きているということを教えてもらった。

……ありがとう。君のおかげで、心の中に彩りが戻ってきたよ……」


夢のような言葉を言う兵藤さんの声を聞きながら、涙が頬を伝い続けた。

私があの家でしてきた事は、ちゃんと彼に伝わってたーー。


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