『ココロ彩る恋』を貴方と……
腕を離されて手を振られた。


「行っておいで」


これは間違いなく「戻っておいで」という意味だ。


「い……行ってきます…」


ドキドキ…と胸の鼓動を聞きながら車を降りる。
一階の端にある自分の部屋に飛び込んで、ドアの閉まる音を聞いてしゃがみ込んだ。


「……まさか、本気で今夜から一緒に?」


自分の言葉に赤面して、両手で頬を包む。


「バカ紫音!何を期待してるの!」


兵藤さんは私を通いじゃなく、住み込みの家政婦として雇う意味で言ったに決まっている。


「そうよ。そうでないと変だし!」


オロオロしながら部屋に上がり、当面要りそうな物だけを選び出す。


「あの安売りしてた下着だけは持って行くまい。再び目に晒したら何を思われることか」


恥ずかしさを思い出しながら、取りあえずの衣類と日用品を揃えてバッグに詰めた。


「そうだ。アルバム」


祖父との思い出が詰まった大切なもの。
それを脇に抱え込んで、玄関のドアを開けようとした。

ノブに手を出そうとしたら外から開けられ、ビクッとした途端、男性が飛び込んできた。



「遅いっ!」


大きな声に驚いて肩が上がる。
唇を突き出したような顔をしている兵藤さんは、ずいっと私に近寄った。


「準備は!?」


「は…はい。できてますっ!」


手荷物のバッグを見せると、それを引っ手繰るように掴む。


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