『ココロ彩る恋』を貴方と……
「兵藤さんの版画は一枚刷りが多いって新聞記事にも載ってたけど、それはインクの染み込み方が違うせい?」
記者のような質問を繰り出していた。
「それもあるけど、同じ下絵が描けないのが理由」
彩さんに見せる為に色鮮やかな下絵を描き始めたこと。
それを暗い色で塗りつぶしてしまったことで話題となり、奇しくも評判になってしまった…と囁いた。
「俺は彩にだけ見せれればいいと思ってあの下絵を描いた。他の誰かに見せたくて、版画を作りだした訳じゃない」
芸術家の顔をしながら語る彼を見つめながら、妹以上の感情を抱いていたんだ…と感じる。
死んでも尚大切に思われる人に嫉妬を覚える。その気持ちを抑えながら、彼の言葉に耳を傾けた。
「この最近下絵を描きながら過去を振り返ってみると、いつも彩は笑っていたことを思い出した。…あの最後の日もやっぱり笑いながら走ってきた。そう思ったら複雑だった……」
黙り込んだ人の目が遠い方を見返す。
何も言わないけれど、あの悪夢のような出来事が浮かんでいるんだろうな…と思う。
「夢の中でも彩は笑ってばかりいたよ。生きてた頃には言えなかった『お兄さん』を連発して喋ってた」
苦笑する声を聞いてハッとする。
「言えなかったの?」
嘘のような言葉に反応を示した。
「俺が嫌だから言わせなかった。親同士が再婚した頃からずっと『アキラ君』と呼んでたんだ」
記者のような質問を繰り出していた。
「それもあるけど、同じ下絵が描けないのが理由」
彩さんに見せる為に色鮮やかな下絵を描き始めたこと。
それを暗い色で塗りつぶしてしまったことで話題となり、奇しくも評判になってしまった…と囁いた。
「俺は彩にだけ見せれればいいと思ってあの下絵を描いた。他の誰かに見せたくて、版画を作りだした訳じゃない」
芸術家の顔をしながら語る彼を見つめながら、妹以上の感情を抱いていたんだ…と感じる。
死んでも尚大切に思われる人に嫉妬を覚える。その気持ちを抑えながら、彼の言葉に耳を傾けた。
「この最近下絵を描きながら過去を振り返ってみると、いつも彩は笑っていたことを思い出した。…あの最後の日もやっぱり笑いながら走ってきた。そう思ったら複雑だった……」
黙り込んだ人の目が遠い方を見返す。
何も言わないけれど、あの悪夢のような出来事が浮かんでいるんだろうな…と思う。
「夢の中でも彩は笑ってばかりいたよ。生きてた頃には言えなかった『お兄さん』を連発して喋ってた」
苦笑する声を聞いてハッとする。
「言えなかったの?」
嘘のような言葉に反応を示した。
「俺が嫌だから言わせなかった。親同士が再婚した頃からずっと『アキラ君』と呼んでたんだ」