『ココロ彩る恋』を貴方と……
「この箱の中身なら要りません」


冷ややかな口調に驚いた表情を浮かべ、兵藤さんは狼狽える。


「怒った?」


自分が大笑いをしたせいだと勘違いをしているみたいだ。
その顔に笑みを浮かべ、あのね…と声を発した。


「丁度いい物を持っているんです。サイズが合うかどうかは知らないけど、それ以外の物は身に付けたくないの」


後で見せるから…と話し、食事をしましょうと言った。

ようやく気持ちの整理がつき始めて、彼の絵を見つめる。



(こんなふうに笑える未来を作りたい……)



過去は暗いことばかりが多かった。


親の育児放棄も、痛ましい事故の記憶も、真っ黒い足のことも全部、出来れば蓋をしてしまいたい。

掘り返すこともなく永遠の闇に葬り去って、二度と光の当たらない場所へと隠しておきたい。



(………でも、それじゃ駄目なんだ)


乗り越えていかないと、未来は永遠に暗いものになっていく。ーーーー




(私……)



……乗り越えていきたい。

ハイレベルな彼と一緒に、未来を彩ってみたい。



(兵藤さんと、心彩る恋を続けていきたい………)



ようやく前が開けた気がした。

暗いトンネルを抜けだし、光が見え始めたーーー。





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