『ココロ彩る恋』を貴方と……
「?」


何処を見てるんだろうかと後ろを振り返ったけど、後ろには庭の樹々しか見えてない。


「兵藤さん?」


不思議に思って声をかけても、彼はただぼぅっとしているだけ。



(……この人、ヤバいんじゃない?)


まさかとは思うけど頭大丈夫?
夜型生活し過ぎて、脳ミソ溶けてるとかないよね?


失礼なことを考えつつ、目の前で掌を振ってみた。
黒目が動き出すことはなくて、不気味に思った私は彼から離れて背中を向けた。



「あ…満仲さん……」


背中を向けた途端に声を発したからギクッとしてしまった。


「は、はい!」


振り向くと彼の眼差しが私のことを見ている。



(なんで?さっきは全然見てる雰囲気なかったのに)


「あの…今日は昼から出かけるので、すみませんが食事を作ってもらえますか?」


目をパチクリとさせている私に構わず、兵藤さんはそう聞いてきた。


「は…はいっ!わかりました。すぐに作ります!……今日は何を食べられますか?」


勿論、食事の種類を聞いたんだけど、やっぱり彼の答えは同じで。


「赤い物がいいな」


「赤い物?」


トマトケチャップでも舐めてなよ…と言いたくなるのを堪えて「畏まりました」と答える。

洗濯カゴを手に中へと戻りながら、さっきの違和感を思い出していた。


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