『ココロ彩る恋』を貴方と……
「まだまだ掴めない人だなぁ」


そう思いながら彼のリクエストに応えるべく、『赤』と書かれたケースの中を覗く。


「サーモン、エビ、トマト、人参、パプリカ、ハヤシライスの素に唐辛子、ケチャップ、チリソース…か。赤の食材って思ってたよりも幅広いよね〜〜」


面白いことに、この兵藤さんって人は色が混ざると食事を食べないらしいんだ。

新しい宗教にでも入ってるのかな?と、最初はそう思うくらい不思議だった。

凡人の私には非凡さが理解できない。どこまでが許容範囲なのかと思いつつ、イタズラ心が湧いてきてしまった。


「そうだ!トマト味の海老ピラフの上にグリーンピースを乗せてみよう!」


赤ばかりの時よりも見た目は美味しそうに出来たのにーー。



「満仲さん…」


兵藤さんは少し顔を曇らせて名前を呼んだ。


「はい」


私はいつもと同じ様に笑顔を返す。


「俺は確か『赤い物』と言ったと思うが」


「はい。ですから赤い物をお出ししています」


「これは赤くない」


彼の指が差したのは、ピラフの上に乗っているグリーンピース。


「悪いが他の色は混ぜないでくれ。食べ物が不味そうに見える」


「えっ…」


「これは食べないでおく」


コトッ…と、ピラフの皿は避けられた。

そのまま一切手を付けずに食事を終えてしまったーーー。


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